それは恐怖ではない
長年の記憶が背中に張り付いていても、それは恐怖ではない。
長年のことだったのだから、すっかりさっぱり綺麗に消えるなんてことは、もしかしたら、ないのかもしれない。痛みを強く感じたことではなく、心から穏やかだったときのこと。信じられないくらいのかけがえのない心地よい時間が、背中に張り付いている。
だけれども、「もう、すっきりとした」という感覚を通ったのだから、長年の記憶が背中に張り付いていても、それは恐怖ではない。
そう思うと、どんなことでもへっちゃらさ。
まもなく、12月。
今年の色々が、ざわざわと(でも、どこか静かに)集まってくる感覚。
苦しかったこと、悲しかったこと、辛かったこと、数えきれない。
いたたまれなくて、逃げ出したくて、それなのに、だとしても、胸に突き刺さる科白を受け取ったりして。
うずくまって、草臥れて、空を仰いで、涙して。
遠くへ行きたいと繰り返し願ってみても、それは何だか滑稽ね。
ここのことを、今ある場所のことを、実は、まだよくわかっていない。
遠くへ行きたいと願う前に、ここに隠れていることを、目の前に引っ張り出さなきゃ。
一日一日を見つめて。
来月は12月。
来年は2022年。そう思うことは、希うこと。
夢を抱くことは、生きていく糧となる。
昨日と今日、明日は繋がっている。
まだ、まだ、だいじょうぶさ。