真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

「いなくなって側にいる」

 

この詩を読んで、感銘を受けて、

詩を書きました。

 

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眠る前に言葉にそっと触れることができたなら

お守りとして抱きしめて 穏やかな夜に 夜を穏やかに

いなくなった人は もういない

のではなくて

りくつづきになっているどこかに いるのかもしれない

 

あなたがいた場所を忘れない

忘れてしまうほうがいいのですよ 

そんな風にいう声も聞こえる
だから 

どんなに形見のセーター可愛いねって言ってもらっても

うれしくなっても 箪笥の奥にしまっておいた方がいいのかもしれない

だけど 着ずにはいられない 

いなくなって側にいる

初ライブ観てくれて ありがとう

みんなに気を遣って シュークリーム買ってきてくれて ありがとう
しばらく休んでいたけれど

これからも また 休むかもしれないけれど

人前で朗読ライブしているよ

続けていることがなんになるのか

どこかでちがう人のこえがする

あのひとや向こう側のあのひとのようにはできないし なれない

だけど いなくなって側にいる

 

観てもらった日のことは忘れない 

ねえ 

なんにもできなかったよ 

ねえ

受け取ってばかりだったよ

 

笑顔と明るい声を

思い出す再生する 

どこかへ届くかしら 声 

いつか思い出すような声と

言葉と温度を

 

「30年介護してきたんだ」

だからこれからどうしたらいいかわからない 

その言葉の深さに

だけど 先月よりはほんの少しだけ表情が明るいような気がする

明るく 見せているだけなのかもしれないけれど

生きるを捨てないで

それを 四六時中ではないとはいえ

見守っていく

その立場にあるというのは

胸がきゅっと 引き締まる

 

30年介護を受けていたその人の服を

介護から手が離れた目の前の人が 着ていた

いなくなって側にいる 

彼の中から彼女の声が聞こえるようだった

 

眠る前に言葉にそっと触れることができたなら

お守りとして抱きしめて 穏やかな夜に 夜を穏やかに

いなくなった人は いなくなって側にいる

たとえどんなに小さくても 灯火が

生きている あなたの側でよりそっていられるように

いのりつづける