真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

先行一車

春の風に誘われたのよ なんていうのもなんだか癪で ずっと前から思っていたのよ 走って走って 走り抜けること あかりちゃんと あっという間に辿り着く だれも着いてやこれないわ 春の風に誘われたのかしら なんて認めるのも癪だから ずっと前から思っていた…

イジワル

今日のあなたったらイジワルね 自分が、ひざぼん擦り傷で済んだからって あたしのこと、ほったらかしにしちゃってさ 今日のあなたったらイジワルね 自分は、ひとりその場に蹲っているからって あたしは、こけたまんま 自転車屋さんの前で あたしといっしょに…

カゼニナル

休みの日もあなたといっしょだなんて、ちょっとねえ。 あたしのこと、そんなにすきやないんやったら、いっしょにいなくってもいいやないの。無理しなくていいわ。 あたしは、風になるのがいいの。 それがいやなら、今日、あなたと会うのはよしましょう。 な…

No.3

おもちの会があった、日のこと。 重い腰を上げて、待ち、は、ようやく、あたしをお店に連れて行ってくれた。か、か、か、かかかかか、と歩を進める度に声を上げるようになってから、数ヶ月は経ってしまいましたよ。お店の影が見えたとき、ほっと、したわ。マ…

No.2

それは1月最後の日曜のことだったさ。 こんな吹雪の日、大変ね、寒いね、たまらんね、待ち、は話しかけるけれど、あたしは無言を決め込んでいる。話すことなんて、なにもないからさあ、それに、このごろ、あたしのうたをうたってくれない。うたってくれない…

No.1

あたしの名前はあかり。紅い自転車あかり。お嬢の名前は待子。 めんどうだから、待ち、と呼ぶね。今日の待ち、はあたしをあちらこちらに連れまわしたよ。ざっと合わせて2時間。しんどいなんていわんけどね。待ち、は夕暮れ時には膝がわらったっていって大儀…