真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

「なくしもの風にのって」

なくしもの風にのって

 

今 目の前にあったものが

信号を見つめて

再び 見つめてみると

もう ない

 

なくしたもの 風にのって

風にのったとしても

まだそんなに遠くに行っていないはずだから

同じところを何度も何度も 行ったり来たり

 

不審がられるぐらい 何度も何度も 行ったり来たりしているから

きっと もう少し もう少ししたら見つかる

そう そう そう だよ

そう そう じゃないよ

地面ばかり見ていたって

 

ここにあるはずだ

ここにあるはずだ

ここにあるはずだ

 

もう ない

 

なくしもの風にのって

風は遠くまで運んでいく

地面に落ちているものだって

ここで だれかが置いていったものではなくて

どこか 遠くから やってきたものかもしれない

 

この地面にあるべきでないものばかりが

この地面にもともとなかったものばかりが

 

なくしものは 遠く 遠くへと 運ばれて

きっと 明日には収集されて

他のチリ紙といっしょになって収集されて

燃えて 消えて いくだろう

 

なくしもの風にのって

今 目の前にあった なんてこともなかったかもしれないし

目の前 というものは どんどんと変わっていく

燃えて 消えても

きっと 確かな ラヴレター

 

 

 

BY 2017.11.14