事実は そこにはない
Aさんの電話に掛けたら Aさんが出る
そう思うことは 正しくなかった
そう思って話し始めたことが どうにも恥ずかしかった
Aさんかどうかを 確かめる間もなく 話し始めたことがショックだった
よく考えてみたら
声が似ていたわけでも
雰囲気が似ていたわけでも 全くない
すぐに 気付かなかったことが ショックだった
沈黙の向こうに だれかがいる
声がしていなくても 向こうに だれかがいる
それを 感じることを 忘れていた
一方的ではいけない
急いてばかりではいけない
時間は まだある 残り時間は 少なくはない
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9年前の今日の写真
事実は そこにはない
電話は鳴り続ける
呼ばれ続けている