ひとりきりではない
ひとりきりではない。
ひとりでいても、ひとりきりではない。
列車に揺られる。窓が開いている。
乗客は少ない。
全く、いないわけではない。
乗客は少ない。
見たことがあるような、ないような背の高い人がひとり、
こちらに背中を向けている。
何かをいいたいような、何もいいたくないような、それでも、その場所に静かにいる。そして、こちらを、そっと見守ってくれている。
がたんごとん、がたんごとん。
風が、さりげなく、吹いている。
どこへ走っている。どこへ向かっている。そんなことは知らされていない。
どこへ走っている。どこへ向かっている。そんなことは、考えていない。
ただ、今は、この列車に乗っていることを、身体全体に受け止めて、それをいっぱいに感じて、それでいっぱいになっている。それだけで、満たされている。風に乗って、時々、不安がやってきても、今、列車に乗っている。
この列車のことは、今日、初めて、知りました。
教えてもらって、とても嬉しかったです。
がたんごとん、がたんごとん。
ずっと、この中に、揺られていたい。ずっと、風を浴びていたい。
だけども、今も、そして、これからも、ひとりきりではない。
それを、不確かな実感をして、安堵している。
がたんごとん、がたんごとん。
ひとりきりではない。