真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

ひとりきりではない

ひとりきりではない。

ひとりでいても、ひとりきりではない。

 

列車に揺られる。窓が開いている。

乗客は少ない。

全く、いないわけではない。

乗客は少ない。

 

見たことがあるような、ないような背の高い人がひとり、

こちらに背中を向けている。

何かをいいたいような、何もいいたくないような、それでも、その場所に静かにいる。そして、こちらを、そっと見守ってくれている。

 

がたんごとん、がたんごとん。

風が、さりげなく、吹いている。

 

どこへ走っている。どこへ向かっている。そんなことは知らされていない。

どこへ走っている。どこへ向かっている。そんなことは、考えていない。

 

ただ、今は、この列車に乗っていることを、身体全体に受け止めて、それをいっぱいに感じて、それでいっぱいになっている。それだけで、満たされている。風に乗って、時々、不安がやってきても、今、列車に乗っている。

 

この列車のことは、今日、初めて、知りました。

教えてもらって、とても嬉しかったです。

がたんごとん、がたんごとん。

ずっと、この中に、揺られていたい。ずっと、風を浴びていたい。

 

だけども、今も、そして、これからも、ひとりきりではない。

それを、不確かな実感をして、安堵している。

 

がたんごとん、がたんごとん。

ひとりきりではない。

 

 

 

 

 

 

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