真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

夢の癒し

実際に見たことがあるような風景と
時空を飛び越えたような感覚と
とても大事な人 ふたり

日差しが強く差し込む空でもなく
真っ白い 
雨雲はない

ずっと走っている 走り続けて 走り続けて
自転車

どこまで どこへいく
どこへいこうかなんて決まっていないまま
ずっと 走っている 
しばらく 走ったら 少し疲れてしまって
自転車を 止める

自転車に乗っていなかったら
自転車を漕ぐことはできても
歩くことなんて 
ぽつぽつ ぽつ
歩くことなんて できないのかと思っていたら

でも なにかに引っ張られるように
ぽつ ぽつぽつ ぽつぽつぽつ と歩いていた

気がついたら とても 泣いていた

とても大事な人
自転車で走っているときに声をかけてくれた
「気をつけていくんだよ」
すれちがって あっという間に姿が見えなくなったから
呼び止めることは できなかった

とても大事な人
歩いていたら 背中を撫でてくれた
「だいじょうぶよ」
そうしたら 涙がどんどん溢れて 止まらなくなった
その場で座り込んでしまった しばらく 立てなかった
だけど もう一度
「だいじょうぶよ」
ゆっくりと 立ち上がる

気がついたら
自転車のところに戻ってきた
もう一度 走り出す

走り回る元気な子供たちの声を背に
普段は いたたまれないその声が ほんの少し 心地よかった

 

とても大事な人
わたしに 逢ってくれて  ありがとう