真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

2時間だけの異空間

 

「初めまして」

そういえたら、どんなにか楽だろう。

初めて会うのだから、(噂には聞いていたとしても、実際には)どんな人かはわからない。こちらのことも、同じこと。直接会うことが初めてだったら、過去にどんなことがあったかなんて、そんなことは大事ではないはず。

 

初めましてではないから、初めましてのふりなんてできないから、わたしはどんな顔をしている。わたしをどんな目で見ているの。脳裏に張り付いてならない。その手が今までなにをしていたかなんて、そんなことを思い出す隙がある。まさか、こちらのことも同じこと。なんてことは決してない。

 

出逢いは突然。

出会いは、時々、続いていく。

消えていく、知らないことになっていく。

忘れていく、忘れてほしいと強く願った、一層、強く、強く。

それなのに、2時間だけの異空間を求めるなんて、どこか滑稽。

 

どの面下げて来れるかね、と思われるに違いない、

 

そう感じるのに、それなのに、その場に行かない選択肢を選ぶことはできない。こんなに悔しいというのに、もしかしたら(というよりもそれを目指し、挑み)あのときよりも、ほんの少しはちがったことばを得られるかもしれない、ちがったことばを求めて、最後に、最後に。

 

連絡を取ってみようか。

 

 さむいですね おげんきですか

 わたしはあいかわらずです、ないているひもありますわらうひもあるよ

 

なんだい、血迷ったか。

そんなことをするわけがない。

 

2時間だけの異空間まで、あと9日。

 

 

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