真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

天井

天井が ぺちゃん

どすん

潰れるかと思った

低い天井 

この低い天井が潰れたら わたしはぺしゃんと小さな声を上げる

そのぺしゃんという声は あまりにも小さいので誰にも聞こえない

そんなことは どうでもいい

そんなことは どうでもいい

ただ わたしの身体が順番に 頭胴体足つま先とぺしゃんと潰れる

 

天井が大きな音を立てた

大きな音を立てたのは 本当は天井ではなかった

どこからだったのだろう 大きな音を立てたその先から

その先まで 連れていかれそうな気がした

 

そんなことは どうでもいい

わたしはただ ぺしゃんと声を上げたその声があまりにも小さかったから

潰れるわたしの身体のことを誰も認めない

 

ここは一人の部屋

ここは一人の場所ではないけれど ただ瞬間そのときは一人だった

 

ぺしゃんと潰れた身体から離れていく 心は きっと楽になってくれるだろう

 

身体と心は同じではない 身体と心は同じです 逆らえません

だけど 拒否権なんてありませんから 

天井はこんなにも低い

落ちてくる

落ちてくる

落ちてこないなんてだれがいった

落ちてくるなんて だれがいった

 

わたしが ここにいることを 忘れてください

 

その言葉は命令ではないから なにも気にすることはありません

気にし過ぎることは ありません

 

わたしが ここにいることを どうぞ 忘れてください

もう 時間がありませんよ

天井を 早く 潰してください

ここに 閉じ込めてください