真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

「即興バー〜ポッケの中の○○〜  vol.3」

***
(水色のその駅を脳裏に焼き付ければいいんだ。この駅に向かって走ったことなど一度もないのだから)



大阪の梅田にある、シングルズという日替わりマスターのバーでの即興バーに参加。賽子が決めたお題で、原稿用紙に何か書く。制限時間は15分。前回の作品集も持ってこられていました。やはり、その場で朗読で聞いたものと、目で見て読むものと、違った感触があります。

一回目のお題は、サハラ砂漠・カクテル
 「闇の砂」

 きみのことを探していました。ずっとずっとただひたすらに歩いていました。わたしはただ夢中になって歩いていました。ぼんやりときみのことを思い出していたんだ。歩いて歩いて歩いていたら、喉が渇いてしまって、声も出なくなったから、立ち止まります。
 きみのことを探しているのに喉はわたしの喉は身勝手であの人のいちばんすきだったカクテルを思い出してしまう。しかたないわね。
 あんなにすきだったディタをこの夏は飲まなかった。なんて、あの人の噂が風に吹かれています。相も変わらずわたしは毎晩ディタを喉に落としているというのに。
 砂の嵐は闇の中。きみのことを探していました。うそ、もう、探してなんかいません。わたしがほんとうに探しているのは、あの人。いつもいつもディタを好んでいたあの人。
 砂の嵐は闇の中。うそ、ここには砂なんてないわ。砂漠なんて遠い昔の中のお話し。あの人の欠片は砂よりも小さくなってしまったのだから。

**
カウンターにお客さんがいっぱいで、しかし、しばらくするとさっと、帰って行ってしまって、気がついたら六人だった。もう、遅い時間だなあ、もう一回書きたいなあ、時間ないよね、と話しているうちに、"5分で詩"を書くこととなった。お題は、持久走・おはよう

  「ただいま」

    モーニングコールが鳴りました
    となりのひとは まだ眠っています
    あたし ずっとずっと前から 長い長い距離を
    走っているの 走っているの
    ひとりで持久走しているのよ
    となりのひとに うそがばれないように
    走っているの 走っているの

    モーニングコールが鳴りました
    「おはよう 夕べ あなたの夢をみたから 
     あなたから電話もらうなんて とってもうれしいわ」
    あたしと電話をくれたきみとの間では
    それが事実

    モーニングコールが鳴りましても
    となりのひとは まだ眠っています
    いつになったら いったい いつになったら起きるのかしら

    となりのひとに うそがばれないように
    走っているの 走っているの
    だけど ほんとうは うそなんてついていない
    それが あたしのとなりのひとの事実だから


たくさんの不機嫌要素をも、消し去るほどのときめきトゥナイトってあるものね。
ほんのわずかな、貴重な贅沢なときめきトゥナイト