真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

心配なんてない

心配してほしいなんて思う気持ちは、お邪魔である。返信してはいけないメールがやってきた。心配なんてないよ、心配なんてないよ、心配してほしいなんて思う気持ちは、お邪魔である。それを知ることができただけでも、返信してはいけない迷惑なメールを受信したことの疎ましさに対する折り合いをつけられるだろう。

「今大丈夫ですか?」
この言葉を見た瞬間、ほんとうは、「大丈夫ではないよ」そう言ってしまいそうになるところだった。いけないいけない、こわいこわいこわい。防ぐことのできるこわいは、防がなくてはいけない。
この言葉を見た次の瞬間、「大丈夫」と思ってみたら、大丈夫になるのだと思った。

大丈夫?
ほんとうは、そう聞いてほしいのかもしれない。
いえいえ、そんなことは、そういうことは、ない。

心配してほしいなんて思う気持ちは、お邪魔である。

自転車で左左へと傾いて、倒れそうになる。
いいえ、左左へと引っ張られていたとしても、ブルーの服があちらこちらで、ただそれだけでこわいこわいこわいだとしても、倒れてはいけない。倒れてはいけない。倒れることはない。猛スピードで走ってくるのが見えたから、随分と手前で止まっていても、猛スピードでこちらへ向かって走ってくる。こちらは見えていないのかしらん。止まっていても、猛スピードでこちらへ向かって走ってくる。こちらは見えても、止まっているこちらが見えていても、突進されることの壮絶な恐怖は知らないのだろうかなあ。


すぐに雲に隠れてしまったけれど、ほんの数分、帰り道、今日も月がきれいだった。それで、とても、嬉しくなった。