真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

「いのちあるかぎり」

おはよう
目を覚ます
体を起こす
日常はつづく

ただいま
おかえり

おやすみ
目をとじる
体をしずめる

変わらない毎日の中で
変わらず毎日
ペンを持つ

ことばをつづる
ことばを かきのこす
ペンを持つ
真っ白なペンを持って
ペンは黒だとだれが決めたんだ

真っ白なペンを持って
ことばをつづる紙が白だなんて
だれが決めたんだ

真っ白なペン
真っ黒な 紙

変わらない毎日の中で
一日も欠かさず
毎日 ペンを持つ

ペンが持てない
右利き です
毎日 右手で持っているペンが
持てない

日々 一日一日
なにも変わらず
日常が つづいていく

そんなことはない
そんなことは ない

あたりまえに 信じていたことは
あっというまに
くずれていく

どうして信じていたのか
木は  立っているものだと
信じて 決して疑わなかった

ペンが持てない
いつもの右手が だめになってしまった
それでも

変わらない毎日の中で
変わらず 毎日
ペンを持っていたい
うまく書けない左手に
ペンを持たせて
ペンを走らせ

ことばをつづる
どんなことば
忘れたくないことば
大切な ことば

ペンを持たせていた
左手も だめになってしまった
ふるえて ふるえて
なみなみと なみになる
文字がかけない
ことばにならない

いのちがけ だあ

文字をかく

ことばを つづる

いのちあるかぎり

BY   2019.01.03