真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

「いまは どこ」


ほんとうのことはみないで
そうしないと くたばってしまうよ
ほんとうのことはいわないで じじつなんてどうでもいい
そうしないと そうでもしないと いたたまれなくて しかたがない

いたたまれなくて かんじょうがあふれて
おもわず ゆるやかになげたぼーるは
みてみぬふりとなりました

かわりに せなかを
ばっどでなぐられました

いたかったです

いいえ いたくなんかありません
ぼーるなんて なげていません
だから しんぱいは いりません
だから もう こわくありません


すれちがうひとが
パトカーが
防災無線
たばこをもつそのてが

のみこまないで そちらのせかいに
あんぜんなんてどこにもないけれど
おだやかなんて どこにもないけれど

かわりに こくどうにとびだそうかとおもったけれど
すこし はずかしくなって やめました

はずかしくないしゅんかんなんてないけれど はずかしくなってやめました

あしたでおしまいのスーパーマーケットでは
ひとむかしまえのりゅうこうかがだいおんりょう
たまにしかきていなかったというのに
せつなくなるなんて なんて みがって


なにをいおうとしていたのでしょう
なにをおもっていたのでしょう
いまは どこにいるのでしょう
どこまでいくというのでしょう 

こえがききたい 
いうべきではないことを つげてしまった
こえをおもいだす それは とてもひつようではないのです

こえがききたい いいえ ただしくいえば 
いま いまのあなたのこえがききたい

だから こえがききたい だけでは たりないのです 

しんぱい ないよ
なかないから な
んて なん
て ことないよ


いまは どこ