真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

ラジオからは17歳の少女の歌声が流れる。さて、はて。10年近く前のあたしは、ただ戦々恐々としていたんだ。
イヤホンコードに指を絡めていると、そこは交差点のど真ん中で。右足を踏んづけたのが、車ではなく自転車のおじさんで一安心。やさしいことに「だいじょうぶ」とさえ、声をかけてくれた。
体が自分のものではないようだ。目は目隠しをされているようで、肝心なものを見せないでいる。足は、逢いたい人に逢わせまいと足踏み足踏み足枷が。
近づいたら動き出すエレベーターは、あたしを感知しない。仕方がないから、一段一段駆け上がる。降りる間際で動いてくれたって、もうおそいよ。