真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

勇気を出せなかったことを、反芻してしてもどうしようもない。
熱帯魚が天井を泳いでいる。

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6月3日(水) 大阪 堂山 日替わりマスター制のシングルズというbarへ行く。
この日は、池上さんの"朗読バー"の日。カラオケのように、ひとりひとり名前と作品(自作・他作問わず)を記入していく。そして、途中、詩のボクシング兵庫県大会予選の話があったりして、順々に朗読していく。
この朗読バーには時々参加しているが、珍しく女性が多かった。が、はじめてお見かけする方もいらっしゃりどきまぎする。お店に到着してから、数分後レディースバー状態が解かれる。

ゆったりとした雰囲気で、朗読は3巡した。
朗読バーはだいたい毎月開催されているが、池上さんのご持参される詩集は、その都度多少ちがうらしい。この日、カウンターにずらっと並べられた詩集の中で、真っ白で美しく光るものがあった。その光にわたしは、導かれずにはいられなかった。

それは、6年前の詩集。なんて美しいのだろう。自分の手元にその詩集がないことを自分自身苦しんだ。
その作者に「朗読してもいいでしょうか?」と訊ねる術はない。その詩集に限らず、主催者が持参されている詩集は(当人の知ることなく)そのbarで朗読されるのだ。待子あかねの作品も、以前一度、(わたしが参加していないときに)朗読して頂いていた。(後日、主催者の日記で知ることとなる)
嬉しいやら、恥ずかしいやら、不思議なもの。

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なんて美しい、なんて素敵な詩集からわたしが朗読するなんてと、一瞬躊躇いはしたものの、信じられないぐらい明るすぎるこのbarで、もうちょっと、若干、明かり落としてもいいんじゃない、と思うほど明るすぎるこのbarで、美しい詩集から一作品、ことばを反芻しながら声に出して、みたい欲望に駆られて駆られて、ならなかった。


身体のそれぞれが震えると、心も震える。はたまた、心が震えているから、身体のそれぞれも震えてくるのかしら。
熱帯魚がすぐ近くで泳いでいるから、勇気を出さなきゃできなかったことは、しない方が(しないで)よかったことなのかもしれない。

「この世の果て」という作品を、待子あかねは朗読した。