真夜中の看板持ち

待子あかねです。詩を書いています。白昼社より詩集『スカイランド』『スカイツリー』発売中。

始まるのは、工事だけではない。(2023年3月より)

 

工事が始まった。

年度末を経て、年度が新しくなるというのに。工事が始まった。

一方、年度を越えても、このまちはあちらこちらで、工事が続いている。

何を取り壊し、何を新たに作り上げているというのだろう。悲しみや苦しみの末に。

 

始まった。

今迄、長年ずっとそこに変わらず(変わらないように見えていた)同じ光景があるということが、終わった。

終わりは始まりとは励ましの言葉というよりも、終わる中に始まりがすでに潜んでいる。

 

変わることを認められるのか、受け入れられるのか、適応できるのか。それとも、変わりいく光景に苦しがっているだけではなく、こちらから見える光景を変えるということが選択肢として、いよいよやってくる。

 

目の前が認識できなくて、山、谷、崖、渦、嵐の中。

ようやく、目の前が認識できたとき、ほっとする。今いる場所をどう感じようとも、今いる場所を、確かめる。わたしは、ここに、今は、いるのだ。

どうしようもないとき、次の瞬間、目を閉じる。そうしたら、浮かぶ光景は、随分前と同じだった。(張り付いている記憶と意識と、それ以外の諸々に)悔しさを感じるよりも早く、安堵する。

安堵できる状況があるというのは、救われること。

 

 

 

 

始まるのは、工事だけではない。

 

芯、抱きしめて、自分らしさとは、自分はどこにあるのか、そして、しっかりと、胸に手を当てて、今、一番大切なことは、今、一番、願っていることは、何かと。考えることを離さない。まだ、まだ、これからが長い月日だとしても。

 

 

 

 

 

【2023年3月の1枚】

 

       泉涌寺